コーポレートカラーの決め方
新しいビジネスや新しい商品・サービスをはじめるにあたってどのようなカラーを選択するかは悩むところです。一度決めたカラーは商品やお店のディスプレイはもちろんWEBサイトや販促物などあらゆるものに使用することになります。
また、一旦決めたカラーはサンクコスト(埋没費用)が大きく簡単に後から換えることができません。ここではコーポレートカラーのカラーの決め方についてCLOVERDESIGNの考えをご紹介します。
コーポレートカラーとは
「コーポレートカラー」という言葉は一般的な国語事典には掲載されていない語句のようです。ウィキペディアによると以下のように記されています。
コーポレートカラーとは、その企業や団体を象徴する色をいい、シンボルカラーとも呼ばれることがあります。 例えば、大手コンビニエンスストアチェーンの「あのお店といえばこの色」のように、ロゴマークとともに「赤と緑」「水色」などそれぞれの色や配色を思い浮かべることができます。
引用元-Wikipedia
企業のブランド戦略やアイデンティティに関わる言葉で一般的にはあまりなじみがなく国語事典にも載っていないことから業界専門用語のようです。
直訳すれば意味は安易に推測できますが、和製英語かと勘ぐってしまったり、深読みしすぎて「社風」と勘違いする人も出てきそうです。
また、法人企業に限ったことではありません。お店ならショップカラーと呼んでも問題ないでしょう。ウィキペディアにあるように本来はシンボルカラーと呼ぶのがふさわしいかもしれません。
コーポレートカラーの重要性
コーポレートカラーは企業の認知度を高め、狙ったイメージを与えるために重要です。
なぜなら、カラーは文字やマークに比べてユーザーの記憶に残りやすいからです。
特に競合が多い分野では自らのアイデンティティを確立できずにユーザーの認知を得られなければその他大勢の中に埋もれてしまいます。
また、同色や類似色を使ったライバルがある場合にはユーザーに勘違いをされる可能性もあります。
そのため、企業が採用するカラーはイメージ戦略の中心的な位置づけとなります。
したがって、使用するカラーを統一化することによって企業のアイデンティティを確立し、企業の認知を高め、企業のイメージを伝えるために重要です。
コーポレートカラーの決め方
競合他社のコーポレートカラーを調査
まずは競合他社を調査しましょう。
アイデンティティを確立して認知されるためにコーポレートカラー戦略があるわけで、同業他社と同じカラーを使っていては誤認されてしまいます。
後から同色のコーポレートカラーを使って参入した場合には中小企業や個人事業者であってもライバル企業から指摘される可能性もありますので事前にしっかり調査しましょう。
そのうえで、自社のイメージや商品やサービスのイメージに合う色という話になります。
代表者がどうしてもこの色がよいというカラーがあればそれでよいでしょうが、それでも競合他社のコーポレートカラーはしっかり把握しておきましょう。
問題 大手三社がレッド・オレンジ・グレーをコーポレートカラーに使っています。あなたがこの業種に参加する場合コーポレートカラーは何色にしますか?
勘のよい方ならこの問題が実在の話であるとすぐに気がつくでしょう。
一般的には暖色系が2社あるので他社と差別化を重要視するのであれば暖色系以外のブルーやグリーンなどのカラーを選ぶところでしょう。
それが標準的な考え方であって間違いではないと思います。競合と誤認識されないという点がコーポレートカラーを決めるうえで最も重要な要素の一つですから。
ローカルビジネスであれば、たとえコーポレートカラーがかぶっていても使用差し止めを求められたりというトラブルになることはまずないでしょう。
ただ、このケースの実際はブルーでもグリーンでもありませんでした。
答え は以下の通りで、いわゆる「ショッキングピンク」といってもよいような鮮やかなピンクでした。
そして、皆さんよくご存じの携帯キャリアのコーポレートカラーでした。ドコモ、au、ソフトバンク大手3大キャリアに参入した楽天モバイルでした。
楽天としては本当は本来楽天カラーである赤色にしたかったのでしょうがドコモとほぼ同じ色なのでそれは使えなかったということでしょう。
大手ではありませんがいわゆるサブブランドや格安simでは、ブルーはauの子会社UQが使用していたり、グリーンはmineoやLINEMOが使用しています。
単色の場合
コーポレートカラーを単色にする場合は、カラーが持っているそのもののイメージを利用することになります。
単色の場合は、ディスプレイや印刷物など背景色がホワイトであることをを前提に考えて決めることになります。
また、コーポレートカラーを背景色とし、白抜きの文字やロゴマークを使用することを前提として決めることになります。
単色はシンプルでストレートな表現となりますが、競合が多い分野では同色や類似色が他社ですでに利用されていることが多く独自性を出しにくいことがあります。
抽象的イメージ | 具体的イメージ | |
レッド | 愛、情熱、危険、怒り、闘争、派手、歓喜 | 炎、血液、トマト、イチゴ、バラ、鳥居、ポスト |
ピンク | 幸福、女性的、優しい、かわいい、柔らかい、甘い | 桜、桃、ハート、女性、フラミンゴ、リボン |
オレンジ | 暖かい、明るい、楽しい、親しみやすい、庶民的 | みかん、オレンジ、夕焼け、にんじん、柿、太陽、炎 |
イエロー | 喜び、希望、幸福、暖かい、注意、警告 | バナナ、ひまわり、レモン、ピカチュウ |
グリーン | リラックス、自然、生命、安全、平和、新鮮、未熟 | 抹茶、樹木、草葉、野菜、芝、苔 |
ブルー | 信頼、誠実、冷静、知性、爽快、憂鬱、孤独 | 空、海、水、夏、ドラえもん、サファイア |
パープル | 高貴、高級、大人、神秘、不吉、死 | ぶどう、茄子、藤、スミレ、ラベンダー、ブルーベリー |
ホワイト | 純粋、無垢、清潔、潔白、善、真理、勝利 | 雪、雲、牛乳、白米、白衣、紙 |
グレー | あいまい、無難、控えめ、上品、落ち着き、不安、不正 | 雲、ねずみ、煙、コンクリート、セメント |
ブラック | 影、闇、悪、不吉、負け、フォーマル、高級 | カラス、髪、夜、暗闇、炭 |
《参考リンク》
原色大辞典 HUE/360複数色の場合
色の組み合わせによってイメージを表現します。
この正方形3つはとある代表的な三つのコーポレートカラーを配色割合で示したものです。比較的簡単にどの業種であるか、そして、どれがどこの会社か見当がつくはずです。
わからない人のために答えを書いておくと、コンビニ業界で、左がセブンイレブン、真ん中がファミリーマート、右がローソンです。
このように単に色の組み合わせだけでなく、使用する色の割合でも認識させることが可能です。
ついでに、なぜ2色も3色も使う必要があったのかという話をしておきます。いまではコンビニ業界は淘汰されて大手3社となりましたが、かつては各社コンビニが乱立していてとても1色ではコーポレートカラー戦略が立てられなかったという理由があるからです。
ということで、特殊なケースということになりますが競合するライバルが多いと必然的にこういう結果になります。
ライバルが限定的なローカルビジネスや逆にライバルは不特定多数で気にしなくてよいネットショップなどでは通常はまずイメージを設定しそれに合う色の組み合わせを選択するというステップを踏みます。
色の組み合わせだけでなくそれぞれの色の使用比率(面積)でイメージは変わってきます。
そのため、ロゴマークやプロダクトのパッケージなど具体的な形状まで含めて決める必要があります。
代表的な色相やトーンを用いることによって典型的なイメージを表現することができます。
典型的なイメージと配色 | |
クリア | 爽やかさや清潔さを表現するには、ブルー・シアン系のカラーをメインにして明るく済んだカラーを組み合わせて配色します。アクセントには彩度をおとした暖色系のカラーもしくはより濃いブルーやバイオレットなどのカラーが効果的です。
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モダン・アーバン |
無彩色や寒色系の色を中心に組み合わせて都会的・人工的なイメージを連想させる配色です。明度・彩度のコントラストを大きく
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ナチュラル | 緑や茶など自然界にある色を中心に薄めで明るい調子でそろえるのが基本の配色です。アクセントには彩度や明度のおさえた色を使います。
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エレガント | 上品な女性らしさを表現する配色です。紫系の色相を中心に明清色から中間色を組み合わせて配色をします。
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ロマンティック |
かわいらしさや幸福感を表現する配色です。明るい清色が配色の中心で淡いほど子供っぽくなります。
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クラッシック | 彩度が低めな赤・茶・黄緑・ベージュといったカラーで配色するのが基本です。淡い色を使うと締まりがなくなるので濃い色や明るい色もワンポイントで使うとよい。
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ポップ | 彩度・明度の高い暖色系と寒色系に、賑やかさを強調する黄色系の色組み合わせて色相や彩度に差を付けてコントラスト感がでるように配色するのが基本的な組み合わせです。鮮やかなカラーで組み合わせるとよりポップで子供向けになり、落ち着いた中間色を組み合わせればカジュアルなイメージになります。
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エスニック | 濃い赤・茶・緑などが配色の基本で、東南アジア系の土着的なイメージを表現します。全体的に調子の強い色となるためアクセントには明るい色もしくは暗い色を使うのが効果的です。
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最後に注意点として、コーポレートカラーを決めてもそのカラーをすべての媒体で同じように表現できるわけではありません。
ディスプレイは自ら発光しますが、印刷物は反射光によってカラーを認識しているため、そもそもディスプレイと紙媒体で同じ色を出すことはとても難しいのです。
そのため、ディスプレイ用と印刷物用で別々にカラーコードを指定をすることが多いのです。
《参考リンク》
Color Hunt Adobe Color 配色の見本帳